Salesforce導入支援事業立ち上げ夜話
はじめに
本記事はSalesforceの技術系記事ではなく、Salesforceの導入支援事業を立ち上げた際の
苦労話、ビジネス立ち上げ前後の状況変化、やってみて分かったことなどをまとめた記事です。
これからSalesforce関連事業の立ち上げを検討されている企業様に向けた記事となります。
なお、記事の記載している私自身の当時の立場は「とあるグループ長」程度で、特に事業に対して
意思決定権もない、ごくごく普通のマネージャー立場での立ち上げ話となります。
立ち上げた背景
特に会社からトップダウンでSalesforce事業を立ち上げよという指示があった訳ではなく
当時、担当するチームで以下の課題があり解消したく、それを実現出来るのが
Salesforceだったという背景があります。(良い意味で弊社はその辺りの裁量が自由です笑)
内部要因
①メンバーにフルリモートでも作業できる事業基盤を提供したかった。
親の介護や子供の育児の場合、顧客常駐や請負案件だと環境が難しいのが実情でした。
実際にそれが理由で退職する事例もあり、解消したかった。
②自社作業 かつ メンバーが共通の話題で開発できる事業基盤を作りたかった。
SIerあるあるですが、客先常駐も多く、コミュニケーションが取り辛い課題がありました。
そこも解消したかった。
外部要因
③利用できるソリューションを効果的に使う時代になってきた。
④単純にエコシステムが魅力的だった。
当初のビジネス概況と現在のビジネス概況について
まずは、論より証拠。
立ち上げ前後でどのようにビジネス状況が変わったのかのかは、下を参照ください。
なお、弊社は2019年から徐々にSalesforce事業の立ち上げを行い、現在4年目の状況です。
※ 具体的な金額や件数は控えさせていただきますが、現在では立ち上げ前の
ビジネス規模以上のスケールを出せています。
立ち上げ前のビジネス概況
・顧客先常駐:80%、自社持ち帰り:20%
・ほぼ既存取引からの継続案件
・業績は期が始まる段階でほぼ確定(既存顧客の取引でおおよその発注量が見えるので)
・同じ組織内だけど、顧客業務や取り扱う技術も違い、メンバー間で共通の話題が少ない
立ち上げ後のビジネス概況
・顧客先常駐:10%、自社持ち帰り:90%
→ ほぼ割合が逆転
・業績はSalesforce導入支援中の顧客からの継続案件:80%、新規顧客案件:20%
→ 新規も多く発生している
・業績確定は期末になるまで上がる可能性あり
→ 案件の発生頻度、期間が短いから
・メンバー数は倍増
→ やることが明確になりメンバーの募集、増員が図れるようになった
・Salesforce関連の悩み、相談などメンバー間で共通の話題ができた
→ 横での共通の繋がりを創れた
改めて文字にしてみると立ち上げ背景で実現したい内部要因の①②は達成しつつあるなぁと感慨深い・・・。
この段階での新たな目標を1つ立案しようかなぁ。
立ち上げ苦労話
ここでは、立ち上げしている中で最も苦労したこと、苦い体験を書き連ねます。
・収益バランスを意識する!
立ち上げたばかりのSalesforce事業単体で見ると最初は収益が取れないのが実情です。
初期段階は、既存ビジネスとの掛け持ちが重要となります。
結果を残すためには、事業ポートフォリオを意識して収益を維持しつつ形態の変容が必要でした。
カッコつけて業態変化させても、収益無くしてメンバーに堂々と給料を受け取ってもらえませんから。
徐々に形態を変化させて、 現在はほぼSalesforceに関連した業務に特化しています。
変換割合は1年目:5%ぐらい(苦しかった・・・)、2年目:20%、3年目:60%、4年目:90%
というようなイメージです。
・賛同してくれるメンバーを集める!というか賛同してもらう動きをする!
何事も新しいことをやる際は、周りからの反発は大きいです。
残念ながら賛同してくれない人、辞めていく人は発生する場合もあります。
それでも諦めず、やり続ける必要があります。
なぜやるのか、なにをやろうとするのか、集団としての根幹(=やりたい人の想い)を
何度でも伝える必要があります。
協力してくれる人は1名、2名かもしれないけど、それを育てていく粘り強さが必要です。
・エコシステム内でフォローしてくれる人を見つける!
最初は実績、実力もないから、業界内でなかなか相手にされないかもしれません。
自暴自棄にならず目標を見据えて、行動してください。
エコシステム内でどこかにフォローしてくれる人、気にしてくれる人は必ずいるので、
その人との出会いのために行動しましょう。
・役員の理解、協力が必須!
当たり前ですが、実施するには役員の協力は必須です。
重要場面では会社対会社のやり取りは発生しますので、その際に役員の協力は必須です。
ボトムアップの場合、何故やりたいのか、何を達成したいのか 説明しておいた方がいいです。
(当たり前だけど、私は若干疎かにしてました・・・汗)
やってみて分かったこと
・AWS、GCP、その他Sassとの連携は必須!
Salesforceだけではなく、その他クラウドのとの連携や開発する場面も多数発生します。
Salesforceだけでは実現出来ないことをAWSやGCP、Azureで実施する、
CRM Analytics(旧:TableauCRM、Einstein Analytics)とGCPとの連携、
SalesforceとBOXを連携させる・・・・などなど。
Salesforceを起点とした課題解決となると、これら専門組織は事業組織体制を一緒 または
近くに配置した方が良いと思います。
・業態を決めることが重要!
パートナーといっても色々なパートナー業態があります。ある程度攻める路線を決める。
パッケージなのか、要員支援なのか、設定より導入支援なのか、開発よりの導入支援なのか、
ソリューションや業界特化なのか、それぞれ強みがあると思いますので、どこから入って
強みとするのか検討してください。
・パートナー間の窓口、面識のコネクションは重要!
パートナー間で協業したり、パッケージを利用したりすることが多いので、エコシステム内での人脈が
非常に重要で必要だと感じました。各イベントに参加して知り合いを増やしていきましょう。
悩み相談など同じ目線で出来るので共感してもらえるし、的確なアドバイスもあったりします。
・マルチクラウドが重要!
1つのソリューションだけではなく、複数ソリューションの組み合わせが重要となってきています。
いわゆるマルチクラウドでの導入支援です。
今では当たり前となったSFA(Sales Cloud)+MA(Marketing Çloud Account Engagement)、
BI(CRM Analytics)からMA ( Marketing Çloud Account Engagement t) への仕掛け、
Salesforce+Slackとの連携など、顧客の課題解決方法を実現するために複数のソリューション構成を
実現することが重要になります。
また、Salesforce内ソリューションだけではなく、AWS、GCPや既存Saasを組み合わせ出来れば
差別化、価値を訴求できます。
これから0を1にしたい企業様に伝えたいこと
苦労話は別にいいから、具体的に何から始めれば良いの?というのが実情かなと思います。
これについては、銀の弾丸のように綺麗なやり方があれば良いのですが、私の場合は
以下のことを繰り返し、愚直にやり続けたのが実情です・・・。
順を追って説明します。
・自社でライセンスを買って使ってみる!
Salesforceを導入するユーザ企業様の気持ちや困るポイント、活用した解決方法を理解するためです。
プリセールスや要件定義で顧客から悩み、相談を受ける事が多くありますが、
その悩みが理解できないのでは意味がありません。また、理解しても解決方法が分からないとも
弊社でもコアライセンスだけではなく、SlackやTableauも購入して活用して、ユーザ企業様と
イメージ共有ができるよう努めています。
・アピール商材を1つでも捻出する。
資格、得意とする業態や業種、企業文化などSalesforce導入支援で私達が強みとなる部分を捻出して
最初のトリガーとなる武器を作りましょう。
私は、弊社が中小企業に位置しますので「Salesforceを導入する際の中小企業の悩み、懸念点は
理解して導入支援できます!」(今となっては謎キーワード….笑)というのが武器でした。
この程度の武器でも良いので、捻出しましょう。
ただ、実際にSalesforceを触ってみて設定してみて「導入する立場ならこう思うよな・・・」、
「こうすれば解決出来そう・・・」とか想像しながらやっておりましたので、嘘ではないです。
・何でもいいから最初の案件の接点を作る。
薄い人脈でも辿る、まずはチャンスを手繰り寄せるアクションが重要です。
我々からするとまったくの未経験、実績なしなので、どうやってチャンスの得るのか?と
疑問に思うかもしれませんが、泥臭く知り合ったAE (Account Executive=外勤営業) さんを
会うため駆けずり回って、捻出したアピール商材でアピールして、チャンスを得るしかないです。
・プリセールスから入って学ぶことをオススメ!
顧客の課題ヒアリングから課題に対するソリューション提案、ライセンス受注までの流れで
導入支援パートナーから見てプリセールスという段階があります。
営業コストになるので嫌がられる部分も理解できますが、このフェーズは最初の方は
積極的に参加した方がいいです。(あくまで私の考えです)
結果が欲しいというのは分かりますが、短期的な収益よりも経験を積む方が最終的な結果に繋がる
というのが理由です。
プリセールスから入って学ぶことで、顧客が求めていること(課題の理解)、
課題を解決するソリューションの活用や提案方法、自らデモを作りそのソリューションの設定方法、
AEさんの案件クローズまでの流れを学ぶ、絶好の機会になります。
・最初の案件は100%以上の体制を構築する!
最初の案件は、最も自社内で成功できる体制を構築しましょう。
理想は、ビジネスをけん引する人を中心に構築した方がいいです。
理由は、まずは自社を顧客やAEさんから圧倒的に評価してもらうことが重要です。
信頼、評判は次への期待、声掛けに繋がります。
そのために、求められることだけを実現するのではなく、調べてみて良さそうなことがあれば
プラスアルファで提案、実現しましょう。これは当たり前品質を魅力的品質に引き上げます。
・同様の動作を2つ目、3つ目と繋げる。
その後、信頼を基盤に顧客から新たな相談を受けたり、AEさんから相談が来るようになります。
小さな回転が徐々に大きな回転になってきます。
大事なのは顧客やAEさんからの信頼です。ここは一番に意識して行動しましょう。
また、AEさんからの相談は即対応すると評価が上がります!(忙しいから)
メンバーからの生の声
実際に各メンバーから立ち上げ前後の様相について、意見を収集して掲載します。
あえてGoodポイント、Badポイント双方を記載しています。
下2つのBadポイントに関しては、想定されうる課題でありマネジメント側でも検討すべき要素があり
参考になるかと思います!
・ 以前は使っている技術がバラバラだったが、Salesforceという1つのキーワードを持てた。
同じ組織内でも異なる顧客、技術をやる事が多く、共通の話題が無い状態であったが、
立ち上げ後ではSalesforceの技術ネタで繋がる事が多くなった。
・ 技術的な質問や調査をしやすいように感じる。
コミュニティ、サポート、利用者のブログ・サイト等で不明点を調査・質問できることから、
まずはライセンスを購入し使用してみることが重要。
・既存案件をやりながら、Salesforceスキルを高める期間はモチベーションを高めるのが難しかった。
・特に常駐メンバーを中心に、メンバー間でSalesforce をやっているメンバーとそれ以外のメンバーで
温度差を感じた。
さいごに
新しく始めるには、何事も情熱や好奇心が最も重要ですね。
顧客含めてスピードが速いですし、新しい試みや新しいソリューションが続々とリリースされてくる、
これまでに想定しないようなトラブルも発生する・・・
これに対処するには、情熱や好奇心などのドキドキが必要です。
それを確認するために、コミュニティに参加してみる、イベントに参加してみる、
コロナ禍が空けたらサンフランシスコのDreamforceに行って最新の雰囲気を肌で感じる。
これで情熱、熱量が出てくるはず。(出てこないのであれば、無理しない方がいいかも・・・)
また、立ち上げ当初は仕事もなく業績にも繋がらず辛かったですが(今でも大変だけど)、
本当にメンバーに恵まれたなぁ・・・と。
支えてくれる、行動してくれるメンバーが多く、協力がなくてはやりきれなかったです。
対応してくれたメンバーが、今では顧客の社長や部長など渡り合い、話している姿を見ると
逞しくなったなぁと嬉しくなります。
メンバーが単にエンジニアだけに留まらず、
ビジネスパーソンとして成長してくれるのがSalesforceの一番の強みかなと思いました。